アップライトピアノの整調⑤

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こんにちは!この連載も第5回ですが、まだまだ序の口です 笑

今回紹介するのは「カラ直し」という工程です。…名前だけではなんのことだかさっぱりですよね 笑

「ロストモーション」と言われることもあります。

この調整の目的は「鍵盤を弾いた力を無駄なくアクションに伝える」ことです。

……。

わかりにくくてすみません…

とりあえず次の画像をご覧ください。

アップライトピアノのアクション、1音あたり100個近いパーツが使われているわけですが、「鍵盤」「ウイペン」「ハンマー」「ダンパー」という4つのグループに分かれています。アクションからパーツを取り外すときは、この4つのかたまりごとに分解していきます。

鍵盤を押した力はウイペンへと伝わり、「ハンマー」「ダンパー」へと伝わります。連動の仕方としては、

①鍵盤→ウイペン→ハンマー(弦を叩いて音を出す)

②鍵盤→ウイペン→ダンパー(弦の止音と開放)

の2パターンあります。カラ直しは①の連動をスムーズにするための調整です。

この工程で確認するのは「ジャック」と「バット」という2つのパーツです。

図をさらに拡大して見てみます。ウイペン側についている「ジャック」は、その名のとおり、上についているハンマーを持ち上げる役目をしています。「バット」は、ハンマーの土台にあたる部分です。

この2つのパーツの隙間(画像赤矢印の部分)をゼロにします。

ここに隙間がある状態を「カラ」といいます。それを直すので「カラ直し」というわけです。

しかし、隙間がない状態ならなんでもいいわけではありません。鍵盤を押していないときでもジャックがバットを持ち上げてしまっている状態は「突き上げ」といいます。

 

カラ→鍵盤の動きがアクションにうまく伝わらず、2度打ち(鍵盤を一度押しただけで2回音が鳴ってしまう)が発生する

突き上げ→アクションの動きに無駄が出て、連打がしにくくなる

 

つまり、ジャックとバットの隙間はゼロである上に、カラも突き上げもない状態にしなければならない、ということです。

 

カラ直しは、鍵盤についている「キャプスタンボタン(キャプスタンスクリュー)」というネジを回して、ジャックの高さを上下させて調整します。

「カラも突き上げもない状態」は鍵盤を押したときの感触や、ジャックやハンマーなどの各部品の動き方を見て判断します。

ピアノという楽器自体に言えることですが、温湿度による影響を受けやすく、天気のいい日に調整して次の日に雨が降るともう変わってしまう、なんてことはしょっちゅうです。

体は大きいですが、中はとても繊細な楽器なのでどうか大事にしてあげてくださいね。